月宮天子―がっくうてんし―
「ちょっとぉ……やめてよね。人に見られたら」

「あら、彼氏って言えばいいじゃない。ねえ海くん」


そんな母の言葉に、一瞬で愛子は真っ赤になる。だが、それを横で見ていた姉の直子が、余計な口を挟んできた。


「こんな子供が恋人なんて、大人の海さんが可哀相よ」

「子供じゃないわよ!」

「子供よ。五歳も下の高校生なんて。ねぇ、海さん?」

「五歳しか離れてません! そうよねっ、カイ?」


何も答えずにオロオロしている海に愛子は苛立ちを覚える。


「あら、母さんはどっちでもいいわよ。海くんは真面目でハンサムだし。お父さんも気に入ってるみたいだしね。どっちのお婿さんになってくれてもいいのよ」


母の余計なひと言に姉・直子は即座に反応した。


「あっ! じゃあ、あたし。大学出たらお嫁さんにもらって。ね?」


なんと、直子は海の腕に抱きついたのだ。しかも、胸を押し付けている!


「いやあ、困ったな。俺なんか、そんな」


とか言いながら海は鼻の下を伸ばしていた。

愛子はそれを見た瞬間、


「あ、そう、勝手にすればっ! 付き添いなんか要らないんだからっ!」


そう言って、ぴしゃりと海を撥ねつけたのだった。


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