アンラッキーなあたし
その日の夜、千葉が寝室のドアをノックした。

近頃あたしは、千葉といるのを避け、夕食の時間をずらし、用事がなければ寝室に引きこもる、プチすれ違い生活を送っていたのだ。

「はい?」

「俺だけど、ちょっといい?」

あれから顔もまともに合わせていなかった千葉が、あたしを呼んでいる。あたしは寝室のドアを少しだけ開き、顔を出した。

「あのさ、この前はごめん!」

千葉はいきなり頭を下げた。

「な、何の事ですか?!」

わかっているくせにとぼけた。あの日のことを思い出すのは、辛い。

「最低のブスなんて、言うつもりなかった。そんなこと、思ってもいない…」

そんなの聞きたくない。なかったことにしたいのに。

「いえ、本当の事ですから!気にしてませんって」

「でも・・・」

「本当に、もういいんですって!弥生ちゃんを突き飛ばしたあたしが悪いんです」

「そっか…」

あたしも千葉もうつむき、会話はそこで途切れてしまった。

きまずーい。
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