アンラッキーなあたし
「平気です!それより千葉さんも嬉しそうですけど?」

あたしは千葉の手をさり気なく交わし、ついでに話題も変えた。

「あっ?わかる?実はさ、やっと長谷川産業と契約取れそうなんだ!」

「えぇ~!それはすごい!しかも、あそこの社長、めちゃめちゃ短気で、気分屋で実はカツラで有名ですよ。怒らせないように気をつけて下さいね。」

「カツラは余計だろ?まぁ、やっと口説き落としたトコだし、頑張るよ。」

千葉はネクタイをキュッと締めた。

「そういや、桜庭。お前、部屋決まったんだって?」

「ええ、お陰様で」

「どの辺り?」

「ここです」

あたしは、不動産屋からもらったアパートの地図を見せた。

「こっから近いなぁ。げっ?ここ、風呂・トイレ共同だぞ?築35年て…。お前、女の子が住むようなトコじゃないじゃん?!」

千葉は顔をしかめた。

無理もない。あたしの契約したアパートは、おんぼろで日当たりも悪い、どぶ臭いアパートagain。むしろ、前よりひどくなっている。

でも、お金の無いあたしにはこれが精一杯だったし、何より一日も早く千葉の家を出なくてはと焦り、ここに決めたのだ。そのくせ、ちゃっかり千葉のアパートから近いところを選んだあたりが、未練ありありなのだが…。
< 298 / 354 >

この作品をシェア

pagetop