アンラッキーなあたし
「はぁ。よくあんな偉そうなことを言ったもんだねぇ。自分はまっさらな処女のくせにさぁ」

ご満悦でお客さんを見送るあたしの後ろに、いつの間にかババァが立っていた。

大森薫子。

この「占いの館」のオーナーで、あたしの師匠でもある。

「師匠!あたしは確かに処女ですよ。でもね、占いはよく当たるって評判なんですからね!」

言い返した途端、むこうずねを容赦なく蹴られ、あたしは、くぅっと声を漏らし、アルマジロみたいに小さくうずくまった。

「いたた…。もう。何すんですかぁ!」

「師匠じゃない!ルコ先生だ!ったく、何度言ったらわかるんだい。頭が悪いねぇ」

ババア…改めルコ先生は、あたしが「師匠」と呼ぶのをひどく嫌っている。理由は、なんだか年季が入っていそう、だからだそうだ。

とはいえ、実際ルコ先生は年季が入っている。あたしの推測では軽く70は越えているはずだ。髪の毛は金髪の坊主で、化粧は濃く、洋服だってアニマル柄なんか着て若作りしているけれど、おでこに刻まれたしわの深さを見れば、その年齢は一目瞭然である。それなのに、自称・脂の乗った四十代と本人は言って聞かない。

これだから年よりは扱いづらくて困る。

あたしは蹴られて赤くなったすねにふぅふぅ息をふきかけた。
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