アンラッキーなあたし
「な、なんですか?」

「まぁ、いいから任せておきなよ。あんたの顔はさ、暗すぎるんだよ。辛気臭い。だからね、こうやって、ぱーっと明るくするんだ」

まるで新しいおもちゃを与えられた子供のように、先生はあたしの顔に化粧をほどこした。黄色や、黄緑の薄いクリームを何層も重ねると、コンプレックスだったあざがどんどん消えていく。

「すごい…」

「こう見えても、昔は美容師を志した時期があってね」

ルコ先生の手は、魔法みたいにくるくると動き、そのたびにあたしはどんどん変わっていった。

「ほら、できた」

鏡の中には、あたしの知らない誰かが写っていた。

「これは…」

驚くあたしに、ルコ先生は満足そうに笑った。

「あんたはこの顔で店に出るんだ。占い師…えーっと…」

「さくらです」

「そう。今日は、占い師さくらの誕生日だ」

仕上げにルコ先生が真っ赤なベールをかぶせてくれた。この瞬間、あたしの中で何かがぱちんとはじけた。
< 46 / 354 >

この作品をシェア

pagetop