アンラッキーなあたし
五回ほどの呼び出し音の後、「はい、桜庭です」と電話に出たのは高校生の妹、すみれだった。

すみれは、地味な母と地味な父から生まれたとは思えないほど明るくて美人でいい子だ。トンビがタカを産むとはまさにこと。ちなみにあたしは、蛙の子は蛙という言葉がぴったりだ。

「すみれちゃん?あたし、さくらです」

「ああ。さくらちゃん?久しぶりだね?何?ママと代わる?」

「あ、お願いします」

妹とは年が離れているせいか、なんとなく他人行儀にたってしまう。ほとんど一緒に暮らしていないせいもある。

それにしても、ママだなんて。

母にはなんだか似合わない響きだった。妹を産んだときすでに高齢出産だった母は、すみれのおばあちゃんに見えなくもない。

ぼんやり考えているところで母が電話に出た。
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