アンラッキーなあたし
と、そこへ、中田さんがやってきた。

「お疲れ様です。今日まででしたね？次の職場でも頑張ってくださいね」

同じくマニュアル通りの言葉を言われているのに、中田さんが言うとなぜこうまで胸に染みるのか。まるで砂漠のオアシス、干からびた田んぼに染みる水じゃありませんか。

あたしは、潤んだ瞳で、「ありがとうございます」と、床を見て答えた。中田さんを正面から見つめるなど、そんな恐れ多いことはできないのだ。

あたしたちは、まだ、そこまでの関係じゃない。まだ、何も始まっちゃいない。でも、これからは…。

期待を込めてやや顔を上げると、そこには優しさを含んだ中田さんの笑みが待ち受けていた。

「桜庭さんに会えなくなるのは寂しいけれど、連絡先も交換しましたし、いつでも連絡くださいね」

ずっきゅーんと胸を打ちぬかれたあたしは、あやうく鼻血を噴出しそうになってしまった。

聞きました、みなさま？あたしに会えなくて寂しいんですってよ。
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