月夜の桜
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桜が目覚めた時には、太陽が天高くに上った頃のことだった。
頭を撫でられる感覚がして、ゆっくりと瞳を開けた彼女は自分が何かを掴んで眠っていたことに気づき、かすむ意識の中で小首をかしげる。
(何? これ……)
握っているものの正体を知るため、桜はゆっくりと顔をあげ……目を見開いた。
なぜなら、彼女の視界に入ったのは愛おしげにこちらを見つめる威月の姿だったからだ。
彼は視線が合うや否やに木漏れ日のような柔らかな微笑を浮かべる。
「おはようございます。姫様」
「お、おはよう?」
「良い夢は見られましたか? 随分と楽しそうにしていらっしゃいましたが……」
「……楽しそうって?」
嫌な予感がして、桜は聞き返す。
彼女は過去、眠りながら笑うと言う少しばかり不気味な行動を取ったことがあった。
その時は未だ幼く、兄に茶化されるだけですんだのだが……。
この歳になってそれをしたとなると、かなりの醜態をさらしたことになる。
女子としてはあるまじきことだ。
恐る恐る、彼女は威月を見上げる。上目づかいに見つめるその瞳は不安げに揺れており、そんな彼女を不思議そうに見下ろし威月は微笑を浮かべる。
「幸せそうに笑っておいででしたよ? とても愛らしいお顔でした」
「……」
あぁ、と桜は項垂れた。
何と言うことだろう、と彼女は頭を抱えると深々とため息をつく。
威月は愛らしいなどと言っていたが、それはきっとお世辞に違いない。
いや、絶対に世辞だ。
しきりに頷き、桜はがっくりと肩を落とす。
(……いけない。自分で考えて落ち込んできた)
威月の衣を掴んだまま俯くと、不意にふわりと握りしめていた手が温かい何かに包まれた。
驚いて顔をあげると、彼女の手には見惚れてしまうほど美しい彼女よりも大きな手が包み込んでおり、戸惑いの視線を威月に向けると彼は柔らかな微笑を浮かべた。
「そのようなお顔をなされていては、せっかくの美しいお顔が台無しですよ?
そうされている姫様も十分お美しいですが、やはり私は姫様の笑顔の方が大好きです」
桜が目覚めた時には、太陽が天高くに上った頃のことだった。
頭を撫でられる感覚がして、ゆっくりと瞳を開けた彼女は自分が何かを掴んで眠っていたことに気づき、かすむ意識の中で小首をかしげる。
(何? これ……)
握っているものの正体を知るため、桜はゆっくりと顔をあげ……目を見開いた。
なぜなら、彼女の視界に入ったのは愛おしげにこちらを見つめる威月の姿だったからだ。
彼は視線が合うや否やに木漏れ日のような柔らかな微笑を浮かべる。
「おはようございます。姫様」
「お、おはよう?」
「良い夢は見られましたか? 随分と楽しそうにしていらっしゃいましたが……」
「……楽しそうって?」
嫌な予感がして、桜は聞き返す。
彼女は過去、眠りながら笑うと言う少しばかり不気味な行動を取ったことがあった。
その時は未だ幼く、兄に茶化されるだけですんだのだが……。
この歳になってそれをしたとなると、かなりの醜態をさらしたことになる。
女子としてはあるまじきことだ。
恐る恐る、彼女は威月を見上げる。上目づかいに見つめるその瞳は不安げに揺れており、そんな彼女を不思議そうに見下ろし威月は微笑を浮かべる。
「幸せそうに笑っておいででしたよ? とても愛らしいお顔でした」
「……」
あぁ、と桜は項垂れた。
何と言うことだろう、と彼女は頭を抱えると深々とため息をつく。
威月は愛らしいなどと言っていたが、それはきっとお世辞に違いない。
いや、絶対に世辞だ。
しきりに頷き、桜はがっくりと肩を落とす。
(……いけない。自分で考えて落ち込んできた)
威月の衣を掴んだまま俯くと、不意にふわりと握りしめていた手が温かい何かに包まれた。
驚いて顔をあげると、彼女の手には見惚れてしまうほど美しい彼女よりも大きな手が包み込んでおり、戸惑いの視線を威月に向けると彼は柔らかな微笑を浮かべた。
「そのようなお顔をなされていては、せっかくの美しいお顔が台無しですよ?
そうされている姫様も十分お美しいですが、やはり私は姫様の笑顔の方が大好きです」