《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
天パーな益岡さんに奥に来るか?と聞かれても三浦さんは、私の隣席を動こうとはしなかった。
「いいや。ここのがオーダーしやすし」
そう言う理由か。
少しワクワクして損した。
しかし、どう見積もっても20……
25歳位か?
やはり、どう見ても年下だ。
残念な話だ。これだけイケメンで年上か同じ年なら私でも頑張ろうと思えたかもしれない。
いやいや、思うだけ無駄か。
現に三浦さんは、年下っぽいし、外見は確かに立派な男なんだけど、どことなく可愛い雰囲気が出ているのだ。そういう雰囲気は、やはり20代男特有の若干青臭くて羨ましすぎる若さからくるものに他ならない。
メニューを眺める瞳を覆う長いまつ毛、滑らかそうなハリのある肌をちょっぴり羨ましく思った。
三浦さんは、ふと顔を上げ私の前にある空のジョッキに視線を向けた。
「次、ソフトドリンクにします?」
「え?」
いきなり聞かれても、なんのことやら理解できなかった。
「いや、飲みものですよ。飲み過ぎたってさっき言ってましたよね?」
「あ? ああ、うん。そうなんだけど……」
「僕、送りますから、あと一杯だけ付きあってもらえません?」
にっこり微笑んできた三浦さん。
送る? 私を? あなたが?
たぶん、社交辞令に違いない。場に馴染んできたらどんどん奥に入って女性陣にチヤホヤされて、そのうち、私なんかに「送ります」なんて言ったことなど、すっかり忘れてしまうだろう。
人生なんて大抵そんなもんだ。
29年も生きてきた。いい思いが簡単に出来る訳が無いって学んできた。生きてれば苦いことばかり……。
例え上辺だけのものだとしても単純に人から気遣われるのを嬉しいと感じる。平凡な男にまで無視されるよりは、ずっといい。
「じゃあ、一杯だけ。モスコミュール」
「え? アルコールですけど平気ですか?」
「平気、平気。あんなのは私にとったらジュースだから」
「……無理しないほうがイイっすよ」
「平気、大丈夫だから」
上辺だけでも心配そうな顔をしてくれる三浦さんがとても嬉しかった。