《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』
マンション内。
大きく高級感が漂う広い空間にある共同のインターフォンに向かい、あらかじめ教えられた番号の1507とボタンを押す。

インターフォンから聞こえてきた低い声。
「もってきたか?」
三浦の開口一番がその台詞だった。

「もってきたわよ」
まるで、映画に例えるなら麻薬の取引みたいな台詞だ。『もって来たか?』なんて金と薬の取り引きみたいだ。


自動ドアが開き中へ進むと開放感のあるエントランスがある。わけのわからない黒いつやつやしたオブジェが、真ん中にドンと置いてある。

ゲストを迎えるように優雅なソファなんかも置いてある。思わず座ってみる。

やだ、やわらか〜。

まるで柔軟剤のCMみたいな感想をつぶやいていた。

エレベーターは乗ってみるとうちのマンションとは偉く違う。明らかに高速。

嘘っ、速いじゃん!
感動もののスピードだった。乗ってすぐにテンションが上がった。が、そのうち段々と一人だし初めての場所だし、何だか急に怖くなってきた。

途中で止まったら、どうしよう。閉じ込められでもしたら? 私ったらトイレも近いしお腹も減ってる。

もしも、エレベーターを吊り下げるロープが千切れたら? きっと、私は後悔するだろう。せめて、買ったばかりのスイーツだけでも食べてくるんだったと。


そんなこんな妄想を逞しくしているうちに15階という半端な階に止まった。

どうせなら最上階に住めばいいのに。

だが、すぐに思い直した。15階というのが、あのドケチで人の事を考えられない男の三浦らしいといえばらしいかな。

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