《爆劇落》✪『バランス✪彼のシャツが私の家に置かれた日』

思っていたより、なんだか緊張している俺。彼女に気づかれないようにそっと唾を飲み込んだ。

俺の隣を歩く彼女は、やはり小さかった。昨日も居酒屋の外で向かいあった時に思ったが、156cm位だろうか?
俺が178だから、20cm程違う訳か。

彼女が歩くたびに揺れる髪を見ながら歩いていたら、彼女がふいに顔を上げて俺を見た。
なんとなく彼女を見ていたと誤解されたくないから、目線を上げ道路の向こう側を見ていたかのように振る舞った。


「もう、そこなんでこのへんで……どうぞ、お帰りください」
丁寧な口調が夜風より冷たく感じた。


「へー近いんだな、あんたんち。俺の家から5分もかかんねーじゃん」


「まあ、そうですね。では、どうも」

茶色いマンションの入り口へ入ろうとする彼女。俺は、急いで彼女の細い肩をがしっと掴んだ。

「ちょっと! なに!」
心底嫌そうな表情を見せられ俺としては、かなり心外だった。

女にこんな顔されるのは、久しぶり……いや初めてかも。

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