隣に座っていいですか?
「まだ開いてますかっ!」

鬼気迫る声が怖いっ!
振り返りたくない衝動!

「もう閉まりましたっ!」
反射的に返事をしていた。
だって
べったりと扉に張り付きながらドンドン叩いてるんだもん。怖いったらありゃしない。この時代変な奴もたくさんいるし。

「お腹空いたんです。餓死します。お願いです何か食べさせて下さい!」

餓死ときたか

てか
そのドンドン叩くのやめなさい。

騒ぎを聞き
お父さんがツカツカ出てきて私の身体を押し、扉を開く。

迫力あるうちの親父。
縦も横もデカいぞ
声も怖いぞ
顔も怖いぞ
ヤーさんみたいだぞ

そんな親父がガラッと扉を開け

「るっせーんだよ!近所迷惑だ!とっとと……」

あれ?
とっとと……で、終わる?

とっとと行け!
じゃないの?

何か違うじゃん?
どうした親父。

その身体越しに見えたのは

背の高い
細身の男と

小さな女の子。

「たなべ さくらです。お父さんとごあいさつに来ました。おそばを食べさせてもらっていいですか?」

髪の毛サラサラ天使が
ニコニコ笑顔で
丁寧に頭を下げていた。

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