隣に座っていいですか?
ざわついた会場の一番後ろ
目まいがしそうなくらい緊張した私の前に、まずは背の高い白髪交じりの紳士と高そうなスーツを着こなしたご婦人が現れた。
「この方が?」
紳士の冷静な声が彼に似ている。
「郁美さん。僕の両親です」
静かに紹介された。
そうなのかっ!
慌てて頭を下げて名前を名乗りご挨拶。
「桜をよろしくお願いします」
紳士はそれだけ言い
スッと先に歩いて行ってしまった。
それだけ?
「ごめんなさいね。愛想が無くて」
作られたような笑顔を見せ
彼のお母さんが言う。
「いいえ……あの……」
「家の事業も継がず、好き勝手ばかりしている息子です。お金に困ったらいつでもいらっしゃい」
堂々と言われた。
普通なら『はぁ?』って文句のひとつも言う所なんだけど、あまりにもその態度と言葉がお似合いで、あぁ本当のセレブなのねと、変に感心している私。
嫌な顔をする彼の背中を軽くつねる。
「ありがとうございます」
素直に頭を下げ
ご両親を見送った。
「すいません。嫌な思いをさせて」
最高に嫌な顔をして彼が言うけど
「お金は大切だよ。困った事があったら、頼る所があるってありがたい話でしょう」
それが現実。
「絶対頼りたくない」
本気で嫌な顔。
まぁ
色々あったのね。
凡人にはわかんないけど「無事報告終わってよかった」ちょっと背を伸ばして彼に告げると苦笑い。
「郁美さんが深く考えない人でよかった」
「どーゆー意味?」
「褒めてるつもりですよ」
「そうなの?」
わかりずらー。
そんな会話をしていたら
もう一組
私達の前に現れた紳士とご婦人
ご婦人はワインカラーのスーツを着ていて、桜ちゃんの踊りを見てハンカチで目を押さえていた人だった。
予感的中だった?