隣に座っていいですか?
「紀之さんにじゃなくってよ。郁美さんにですから」

「でも」

「亡くなった奥さんの仏壇を綺麗にして、桜の面倒を見て、それだけでも負担なのに……」

「違います」

「紀之さんには……正直まだ許せない部分もあるので、確執はないとは言い切れないけれど。弥生と似ている貴女は可愛くて、縁も感じてます」

そう言われて
大人しくなってしまう私。

付き返すのも申し訳ないので
頭を下げて受け取ると

突然
聞きなれた音楽が流れてきた。

この曲は【浦島太郎】

「おばあちゃん見て見て!」

田辺 桜劇場
【ひとり浦島太郎】開演です。

今日も
ハードロッカーコンブ
いい出汁出てます。

桜ちゃんのおばあちゃんは、とっても感動したようで拍手を沢山して「おじいちゃんにも見せたいなぁ」って桜ちゃんを抱きながら言う

すると

「さくらもおじいちゃんに見せたい」
大きな丸い目が真剣になり

「いくちゃんママ。さくらはおじいちゃんに【うらしまたろう】さんを見せたい」
ジタバタしている。

「桜。おばあちゃんのお家にお泊りする?」
優しく言われて
桜ちゃんはうなずく。

「おじいちゃんもおばあちゃんも桜が来てくれると嬉しいわ。今日は何を食べましょうか。そうそう、おばあちゃんのお家にね、可愛いトイプードルが家族になったのよ。まだ子供なの」

うわぁ
桜ちゃんより嬉しそう。

「わんちゃん?」

「おじいちゃんがね、おばあちゃんが寂しいからって買ってくれたの。茶色くて目が丸くて桜みたいよ」

「いく!さくらはおとまりする。わんちゃんにあいたい」

そんな話になって

桜ちゃんお泊り。

運転手付きの高級車に乗って

行ってしまった。
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