隣に座っていいですか?
気が付かなかったけど
お洒落な物置の前で
田辺さんが小さな自転車を磨いていた。

「あ、すいません勝手に入って」
素直に謝ると

「とんでもない。郁美さんならいつでも歓迎です」

桜ちゃんと同じ笑顔を見せ
田辺さんは私の元に歩いてきた。

「佐藤さんからお下がりをもらいました」

みんなに助けられて生きてます。

田辺さんのキャッチフレーズ。

「母がちらし寿司を作ったので」重箱を差し出そうとすると、自分の手が汚れているのを気にしてオタオタしていたので「中に置いてきますね」と言うと「助かります。桜がいますので」そう答えた。

私は田辺さんに背中を向け
家に入ろうと思ったけど

どうしても

いや
言わなくていい
言わなくていい事
私には関係無い事
人それぞれに理由があり

私が口を出す事ではない


でも

スッキリしない

だから
田辺さんの目の前にまた立ち、一気に言葉を吐き出した。
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