先生と教官室3~沢山の初めて~
電話の会話を聞いて思ったことは、ただいいなっていう憧れの気持ち。
こんな家族になりたい、ただそう思った。
「そうですね、今の家族があるのはきっと妻のお陰でしょうね。」
携帯を鞄にしまいながら、冨田先生は車の鍵を取りだす。
それを見て、自分も車の鍵を取りだそうと鞄に手を入れた。
「あ、そういえば…冨田先生って奥さんにまだ先生って呼ばれているんですね。」
「えっ……。」
「さっき思いっきり言ってましたよ?」
「あー…あはは、名前で呼ぶように言ってるんですけどね。たまに油断すると出てしまうみたいなんです。何でも先生っていう呼び方が癖になってるらしくて。あ、もしかして片瀬さんもそうなんじゃないですか?」
「はい。僕も名前で呼ぶように言ってるんですけど、いつまでたっても先生ですね。」
「まぁ、先生って呼ばれるのも悪くないんですけどね。ただ周りの視線が気になるだけで。」
「あはは、そうなんですよね。その通りです。」
冨田先生と奥さんのように何十年の付き合いでも直らない癖なら、きっと伊緒も直らないだろうな。
まぁ、二人きりの時なら別にいいか。
「じゃぁ甲田先生、僕はここで失礼しますね。」