先生と教官室3~沢山の初めて~
表情筋が緩むのが解る。
俺のも、冨田先生のも。
「あぁ、一緒に食べよう。頑張って早く帰るな。」
『うんん、ゆっくりで大丈夫だよ。気を付けて帰ってきてね!!』
どれだけ疲れていても、子供にこんな可愛いことを言われたら全て吹き飛んでしまうだろうな…。
現に、冨田先生すごく幸せそうな表情してるし。
『もしもし?』
「あぁ麻椿か。ケーキ、ありがとな。」
『うんん、いつも貰ってばかりだから。永愛と瞬輝も待ってるけど、幸穂も起きて待ってるよ。今日お昼寝しすぎたみたいでまだ起きてるの。だから、寄り道せずに帰ってきてね。』
「麻椿じゃないんだから寄り道なんてしないよ。」
『あ――、そんな風に意地悪言うなら先生の分のケーキ食べるからね。』
「あはは、冗談だよ。直ぐ帰る。じゃぁ、車乗るからそろそろ切るな。」
『うん、解った。気を付けてね。』
それからもう一度『また後で』と言って電話を切った冨田先生。
電話の会話を勝手に聞いてしまったという罪悪感もあったが、それを上回るような幸せな気持ちが俺を包む。
「すみません、音量設定がでかかったみたいで…全部聞こえてましたよね。」
「…そうですね。すみません、僕もつい聞き入ってしまって。良いご家族ですね。凄く幸せそうです。」