先生と教官室3~沢山の初めて~
先生の手を振り払おうと腕に力を入れる。
「―――ぅわっ!!!」
でも、そんな私の考えを察知したのか、腕を上げようとした瞬間、力強く抱きしめられた。
「ごめん伊緒。もういじめないから許して。」
「……………。」
先生の低い声にドキドキしながら、揺らぎそうな気持ちを一生懸命怒りの方へと留める。
駄目、こんなことで許してたら先生を甘やかすことになるっ!!!
「…実はさ、俺が2人を送ってる間、伊緒が1人で泣いてるんじゃないかって心配してたんだ。」
「え?」
突然の発言に、留めていたはずの気持ちがどこかへ飛んでいきそうになる。
「さっき志帆さんの話し聞いて泣きそうになってただろ?だから、俺がいない間に泣いてるんじゃないかって。でも、帰ってきたらいつも通りの伊緒がいてさ…。何かそれがむしょうに嬉しくて、浮かれていじめすぎた。すまん。」
抱きしめられているから顔は見えないけど、お互いに鼓動が速くなっているのだけは解る。
先生も私も、すごくドキドキしている。
「…え、え、え、そんなこと…いやでも、何で1人で泣いてたら心配なんですか?」
ドキドキして、凄く動揺しながらも先生に問いかける。
すると、先生は抱きしめる力を少しだけ強めた。
「そりゃ、伊緒が泣いてたら…抱きしめて、隣に居てやりたいって思うからだよ。高校生の頃みたいに1人で泣くんじゃなくて、今は近くにいれるんだから…俺が居るところで泣いて欲しいんだよ。」