先生と教官室3~沢山の初めて~
胸の奥がジンジンと熱くなるのが解る。
なんだろう、どうやって言い表せばいいのかな。
自分でもよく解らない感情がグワーッて押し寄せてくる。
「…そんなこと言うの、ずるいです。」
さっきまでは本気で怒ってたのに、先生のそんな気持ち聞いたらドキドキせずにはいられなくなる。
強く抱きしめてくれる腕や、ピッタリと引っ付いている身体。
その全身から先生の想いを受け取っているようで、心地いいような落ち着かないような気分になる。
「伊緒、もう泣いてもいいよ。傍にいるから。」
お互いの身体を少し離してから、先生の手が私の顔に触れる。
大きくて暖かい先生の手は、私の顔を簡単に包み込んでしまう。
「もう、大丈夫ですよ。泣きません。」
「そう?無理してないか?」
「はい。さっきは志帆さんの気持ちが嬉しすぎて泣きそうだっただけで、悲しいことがあったわけじゃないですし…。それに、今は先生にドキドキしすぎてそれどころじゃないです。」
「っっなんだそれ、お前の方がよっぽどずるいだろ…。」
「えへへ、お返しです。」
さっき勇二さんが言っていた『先生の表情が変わった』っていうのは、本当かもしれない。
なんだか、昔より照れやすくなった気がする。
私の言葉に顔を赤くし、手で口元を隠しながら照れてくれる回数が格段に増えたように思える。