今宵、きみを想う
 「ごめん、勘違いさせるような態度とって」

 「……うん」

 「お前以上に大事な奴、いないから」


 ぎゅっと力を込めて抱きしめながら言うと


 「……バカ」



 ちょっぴりだけど和らいだ彼女の声が返ってきた。




 ―――本当に何もないんだ。本当に。




 何もなさすぎて、それが切なく自分の中に残ってるだけで。


 だから。


 本当に何もないんだ。


 これまでも。


 そして君がいる以上、これからも。



 そっと右耳に髪をかけ、彼女の唇にキスをした。



 伝われと祈りながら、気持ちを込めて……



 *
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