Z 0 0 Ⅱ

ラビと話している間にも、ウーリーは茅野の指を握ったまま、肩に飛び付いてきていた。
丸い頭を指で撫でてみたり、ぺたぺたと耳を触られるがままにしてみたりする。

茅野の気に入った様子を見ながら、しかしラビは、とんでもなく恐ろしいことを言った。


「それから、運が良ければ見られるけど、こういう小型のサルやネズミや魚なんかを主食にしてる、アンゴイイーターっていうクモがいて」
「はい?」
「一人の時は絶対に近寄るなよ。好き嫌いが激しいから人間は補食しないけど、噛まれると三時間は動けなくなる毒を持ってるから……あ、アンゴイっていうのはサルって意味の」
「はい?」
「だから、ゴライアスロックイエローストライプニー“アンゴイ”イーターL.T.っていう、ツチグモの世界最大種がここにはいるんだよ」


肩に乗ったウーリーが髪の毛で遊ぶのを手で制していた格好のままで、茅野はぱちりと瞬きをした。
わずかに綻んでいた表情が、真顔に戻っている。


「クモ?」
「うん」
「サル食べるんですか?」
「捕まればな」
「最大種?」
「一キュビト半は軽く超える。綺麗なやつだよ」
「クモ……?」
「うん」


黙り込んだ茅野はその後数瞬、真顔で目を開けたまま気絶したのではないかとラビが焦るほど、凍り付いていた。

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