Z 0 0 Ⅱ
さっき聞いたばかりのゴライアスなんとかの話は綺麗さっぱりなかったことのように振る舞って、茅野とラビは奥へ奥へと進んでいた。
熱帯ゾーンはこの動物園島の南にあるゾーンである。
つまり、今は島の南端へと向かっていることになる。
ラビは個人的にとっておきらしい生き物の話を流されたことが腑に落ちないようだったが、頑なに話題を変え続ける茅野に、なにかただならぬものを感じ取ったのだろう。
それ以上その話を蒸し返すことはなかった。
茅野だって、肩に手のひら大の謎の甲虫が留まっていても足下でピンクのアリが不気味なコロニーを作っていても顔色一つ変えないが、それは単純に顔に出ないというだけで、驚きや嫌悪感といった感情はあるのだ。
むしろ虫は嫌いなほうだと、自分でも思っている。
ドラゴンや喋る小魚の大群は平気なのに虫のなにが駄目なのか自分でも不思議だが、駄目なものは駄目なのだ。