Z 0 0 Ⅱ
茅野は、足を取られそうになる柔らかい地面を必死で歩きながら、目についたものから話題を探していた。
足元は深緑色の苔が絨毯のように敷き詰められていて、スパイクつきのブーツでなければ、こんなふうには歩けないだろう。
「苔だらけですね。もっと腐葉土とか泥みたいな感じかと思ってました」
「ああ……この土には、発熱する砂が混じってるからな。湿気もあるし、熱帯ゾーンは苔のゾーンと言っていいくらいだ」
「え?」
「ん?」
茅野の上げた声に、ラビは立ち止まって振り返った。
緩まない歩調でどんどん先へ先へと行ってしまうくせに、茅野の疑問には、どんな些細なことでもこうして立ち止まって顔を合わせて答えてくれるのだ。
「発熱? してるんですか?」
「赤石を砕いたものを混ぜて、地面ごと温度を上げてるんだよ」
「アカイシ?」
「ああ……そっか、そこからか」
ラビは小さく首を傾げた。
肩をすくめたようにも見えるその仕草は、説明に困った時のものだろう。
なんと言えばいいのか考えあぐねている様子を見て、茅野は言った。