気まぐれ王子とサル女
「あっ、千夏だ!
じゃ俺先にいくから。」
爽太は「もう転ぶなよー」と言いながら
保健室を後にした。
「まっ…」
待って。
私はそう言いたかった。
でも、私にはそんな権利ない。
「爽太には彼女がいるんだった…」
爽太に絆創膏を
貼ってもらったぬくもりが
今も膝にしみついている。
けど、爽太には
千夏ちゃんがいるんだもんね。
千夏ちゃんは私以上に
愛されてていいなぁ。
応援するって決めたのに
爽太の優しさを
嬉しく感じてしまう自分が
憎くてしょうがなかった。
自分なんて大っ嫌い。
目の前がだんだんにじんでゆく。
目から溢れた涙が
絆創膏の上にぽつりと落ちた。
「爽太…」