猫を撫でる。
「俺にとって美梨は大事な人なんだ。
誰が何を言おうと、俺は美梨を本当に愛してるんだ。
美梨を傷つけるようなことは、
しないでくれ」
言い終わるとすぐに美梨の手を取り、立ち上がった。
涼太に続いて部屋を出る時、美梨は一瞬、振り返り、貴子を見た。
貴子は、鬼のような形相で睨み付けていた。
美梨は震え上がり、
すぐに目を逸らした。
(あんたのこと、絶対許さない…)
貴子の憎悪に燃えた目は、
美梨にそう告げていた。
美梨と涼太が部屋に戻ると、すでに座卓の上に食事が用意されていた。
所狭しと並べられた、たくさんの
ご馳走を前に、美梨と涼太はビールで
乾杯した。
貴子のことは、もう忘れたかのように。
この旅行が終わったら、二人は別れるというのに、涼太の情熱的な言葉を聞いた美梨は複雑な気分だった。
….…不実なのは自分の方だ。
貴子が自分に対して攻撃的になるのも
無理はない…
美梨はそう思った。