猫を撫でる。
涼太は二人を諭すように語った。
まるで涼太が『先生』で、貴子と美梨は
『喧嘩した生徒』みたいな雰囲気だと美梨は思った。
「貴子、俺の携帯どうして持ってたの?俺は、てっきり現場事務所に忘れてきたと思ってたんだけど」
「…涼太が喫茶店のテーブルに置き忘れるのがいけないんでしょ。
盗ったみたいに言わないでよ」
貴子は不貞腐れたように言う。
そして、ふっと泣き顔になり、
「涼太…その人は、結婚してるじゃない。私、涼太のことが心配で、いろいろ調べたんだから。騙されてるよ…早く目を覚ましてよ」
と哀願するように言った。
涼太は貴子の言葉を完全に無視した。
「俺の携帯見て、俺たちがここに泊まること知ったんだろ?
こんなことして何になるんだよ。
どうしたいんだよ?」
「…別れさせたかったの」
貴子は涼太を睨むような目付きをした。
これ以上追い詰めても仕方ない、というように溜息を吐いたあと、涼太は貴子を真っ直ぐに見て言った。