猫を撫でる。


涼太は二人を諭すように語った。


まるで涼太が『先生』で、貴子と美梨は
『喧嘩した生徒』みたいな雰囲気だと美梨は思った。



「貴子、俺の携帯どうして持ってたの?俺は、てっきり現場事務所に忘れてきたと思ってたんだけど」


「…涼太が喫茶店のテーブルに置き忘れるのがいけないんでしょ。
盗ったみたいに言わないでよ」


貴子は不貞腐れたように言う。
そして、ふっと泣き顔になり、

「涼太…その人は、結婚してるじゃない。私、涼太のことが心配で、いろいろ調べたんだから。騙されてるよ…早く目を覚ましてよ」

と哀願するように言った。


涼太は貴子の言葉を完全に無視した。


「俺の携帯見て、俺たちがここに泊まること知ったんだろ?
こんなことして何になるんだよ。
どうしたいんだよ?」


「…別れさせたかったの」


貴子は涼太を睨むような目付きをした。


これ以上追い詰めても仕方ない、というように溜息を吐いたあと、涼太は貴子を真っ直ぐに見て言った。

< 31 / 40 >

この作品をシェア

pagetop