君に逢いたくて~最後の手紙~
優斗の腕には、痛々しい
針の痕がある。



それを見た瞬間、私は
心が痛くなった。



そして、優斗の手を優しく握った。




「優斗…。本当に死んじゃうの…?
……やだよ…。…死なないでよ…」



私は耐え切れず、涙を流した。



美夏が私の背中をさすってくれる。




「梨衣奈…。泣かないで。
大丈夫だから…」





私は美夏の言葉にうなずき、
手で涙を拭った。




「この子はね…すごく強い子なの」



優斗のお母さんが話し出した。




美夏と私は優斗のお母さんに
目を向けた。




「…胃ガンだっていうことがわかって、
引っ越しを決意した。


入院して、この子から
笑顔が消えた。


梨衣奈ちゃんに会えなくて、
毎日寂しそうな顔をしてたわ。

口数も少なかった。



< 189 / 209 >

この作品をシェア

pagetop