ライラックをあなたに…
恋人でなければ友達でも無い。
職場の同僚でなければご近所さんでもない。
なのに、そんな彼に最悪で一番惨めな姿を晒している。
見せたくないのに涙は次から次へと溢れ出して来る。
ただただ、無言で背中を擦る彼。
その手があまりに優しくて、今だけは縋ってもいいんじゃないかと錯覚する。
――――今だけは、今だけは………。
私は現実から逃れるように、彼の肩口にコツンとおでこを預けた。
抱きつく訳でも無く、抱き締められる訳でも無い。
ただほんの少しだけ、彼に弱い自分を受け止めて欲しかった。
時折、横を通り過ぎる車のヘッドライトが私達を照らしながら………。
「ごめんね………ありがとう」
数分なのか、数十分なのか、時がどれ位経ったのか分からない。
彼は無言のまま、私に寄り添ってくれていた。
涙も枯れ果て、喉が渇き始めたのを機に、私は彼から少し離れた。
すると、