ライラックをあなたに…
リビングのソファは2人掛け。
そのソファに、小さく身体を丸めて彼女は寝ている。
華奢な身体が更に小さく感じた。
まるで、恐怖から耐え凌ぐみたいに……。
部屋の間取りは2LDK。
学生の身分からしたら贅沢な方だ。
このマンションは父親の友人が所有しているモノらしく、田舎から上京した俺にとってまさに『城』とも言える物件だ。
リビング続きの東隣りの洋間は俺の寝室と化していて、ベランダへ出る事が出来る掃出し窓が南側にある。
一方、リビング続きの反対側に殆ど使っていない洋和室がある。
日中はそのスライドドアを閉め切っていたから、もしかしたらクローゼットとでも思っているのかもしれない。
だって、使っていない部屋があったら、きっとその部屋に寝たいと思うだろうから。
俺は洋和室の押し入れを開け、中から客布団を取り出し、畳の上に手早く敷いた。
年に数度、母親が上京する事もあり、その時用に一応布団だけはある。
俺は再びリビングへと戻り、彼女をそっと抱き上げた。
余程疲れているのか、規律のいい寝息を立てている。
そんな彼女を起こさないようにそっと布団へ寝かしつけると、ふと視線の先に違和感を覚えた。
それは……――――。