ライラックをあなたに…
突然、おでこに軽い衝撃を受けた。
項垂れていた私のおでこが、一颯くんの鎖骨に当たったらしい。
いつの間にか彼の長い腕の中に閉じ込められ、爽やかな香りが鼻を掠める。
「会社に行くのが憂鬱としか考えてなかったよ」
「一颯くんが謝る事ないよ?ホントにこれは私の問題だから」
自分に言い聞かせるように心の中で何度も唱える。
有給休暇を使用しても足りない約2週間。
頑張って出勤しなければならない。
解ってはいるが、やはり気が重い。
休み明けという事もあり、余計にそう感じるのかもしれないが、それでも自分自身を鼓舞せねば、到底出勤出来るような気分じゃない。
一颯くんはゆっくりと腕を解き、私の顔を覗き込んで来た。
「1人で行ける?俺が会社まで一緒に行こうか?」
「だ、大丈夫だよ!一颯くんは大学に行かないと!!」
「俺の心配は要らないから。大学へは10時頃までに行けば大丈夫だし」
「ホントに大丈夫だから……」
「本当に?」
「う、うん。………大丈夫」
じっと見つめられると答え辛い。
心の奥まで見透かしてそうな彼の瞳。
無意識にトクントクンと心臓が早鐘を打つ。