ライラックをあなたに…


「寿々」

「……はい」

「今、うちに鷹見さん親子が見えていて、寿々に謝罪したいそうだ」

「えっ?」

「これは、けじめだと思って………」

「…………そうですね」



父親のいう『けじめ』とは、今日までの5年の清算を意味している。


一度は『嫁』として受け入れて貰えるほど、心を通わせた人達。

今の私には声を聞く事すら辛いけれど、この機会を逃がしてしまったら、きっと後悔するに違いない。


一生『キズモノ』として生きてゆくのは嫌だから、私はその提案を受け入れる事にした。



今日が終わりの日だというのなら、今日という日が始まりの日でもある。

私の人生で何度あるか分からないターニングポイント。


辛いと思ったら、そこで終わってしまう気がする。


これからの人生を考えたら、きっと今日の出来事なんて想い出の一部にしか過ぎない。

……そう思える日が来る事を願って、私は謝罪を受け入れる心構えをした。



そして―――――。

父親から携帯電話を受取った侑弥さんの父親は、鼻声で話し始めた。


< 167 / 332 >

この作品をシェア

pagetop