ライラックをあなたに…
「寿々さん、本当に申し訳ない。謝罪しても謝罪しきれない。人として最低なのは重々承知している。罵倒されて当然だと思っているし、一生をかけて償っていくつもりだ。本当に………本当に辛い思いをさせて申し訳ない」
その声は涙を流していると感じる程、とても痛々しいものだった。
普段は温厚でいつでもにこやかな笑顔を振りまいていたお義父さん。
その笑顔から人柄が窺えて、何度も家に呼んで貰った。
娘の居ない鷹見家にとって、私は実の娘のように可愛がられていた。
しかも、初めて実家に彼女を連れて来たとあって、彼のご両親は快く私を受け入れてくれた。
彼の母親もまた優しい感じの人で、少しおっちょこちょいな所が可愛らしくもあった。
私にとって、第二の実家だったのは言うまでもない。
けれど、今こうして電話越しに会話しているという事は、彼のご両親との縁も途絶える事になる。
再び胸が重く痛んだ。
私が胸元をギュッと掴んでいる間にも、お義父さんは何度も何度も謝罪を口にしている。
それを聞く度に、心臓を串刺しにされているみたいに痛みが走る。
その痛みが永遠に続くかと思うと怖くなって、私はありったけの勇気を振り絞って口を開いた。