ライラックをあなたに…
物凄く間近で心配そうに覗き込む彼。
一体、誰だろう?
少し茶色がかった髪に黒曜石のような漆黒の瞳。
スッと通った綺麗な鼻筋に、薄い唇は艶気を帯びている。
見るからに美男子で女に不自由してなさそう。
私は名前も知らない彼の顔をマジマジと見つめた。
「気分はどう?気持ち悪くない?」
少し低めの声の主は、勿論目の前の彼で、私の具合を尋ねているだけなのに何故か、心地いい優しい声音に思わず、うっとりと聞き入ってしまった。
二日酔いのせいなのか、寝起きだからなのか。
上手い言葉が出て来ない。
すると、彼はフッと表情を和らげて、私の髪をそっと撫でた。
「もう、大丈夫みたいだな」
「へ?」
彼が発した言葉の意味が分からない。
『大丈夫』って、一体何のことだろう?
ますます分からない事だらけで、頭の中が混乱する。
「何か、飲む物を持って来るよ」
彼は私をベッドに残して、部屋を出て行った。
今の………何?