ライラックをあなたに…
私を抱きしめている腕を解いて身体を起こした彼は、とても穏やかな優しい表情をしていた。
何て言うのか、こう……そう、安堵した顏。
心からホッとした、そんな表情を浮かべていた。
一体、何故?
頭が混乱して何が何だか分からない。
とりあえず、彼が戻る前にベッドから出ない事には。
私は鉛のように重い身体を捻り、上半身を起こすと、見慣れぬ服を着ている事に気付く。
そして、左手首に巻かれた包帯。
何故、こんな物が?
身に纏っていた衣服は、恐らく彼の物であろう白いYシャツ。
男物のYシャツの他には自分が着ていた下着だけ。
ベッドの周りを見回しても、自分の服らしき物はない。
何故、こんな姿なのか、思い出そうにも記憶がない。
鈍器で殴られたような酷い痛みが頭を襲うだけ。
私は右手で違和感のある、巻かれた包帯部分に触れてみた。
「ッ!!」
差ほど強く押してもいないのに、ピリッとした鋭い痛みが走った。
何時の間に出来たんだろう?
痛みに顔を歪めていると、彼が姿を現した。