ライラックをあなたに…


ハーブの爽やかな香りが彼から仄かに香る。


侑弥さん以外の男性に抱きしめられるなんて久しぶり。

正直、どうしていいのか分からない。


悔しさと切なさと悲しさと……。

何とも言えぬ重い感情が堰を切ったように胸の奥から溢れ出し、彼が抱きしめる事に抵抗する事さえ忘れていた。


今はただ、誰かに受け止めて欲しくて。




暫くして、彼は抱きしめている腕をはらりと解いて、ゆっくりと背中を擦り始めた。


Yシャツ越しに伝わる彼の体温。

心地の良いぬくもりと彼から香るハーブの香り。

そして、何処からともなく漂って来る、お日様の匂い。


懐かしいような不思議な感覚と共に、私はポカポカと暖かい彼の腕の中に吸い込まれて行った。






「……んっ………」


重い瞼を開けると、まだ少し鈍い痛みが頭を襲う。

私……また眠ってしまったのね。


二日酔いはまだ抜けてないらしく、その鈍痛のもとへと自然と指先が吸い寄せられた。


こめかみを押さえて顔を歪めたその時、


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