ライラックをあなたに…
私は恥ずかしさのあまり、俯き加減で呟いた。
普段だったら1度聞けば覚えられる。
けれど、さっきは気が動転してたし、二日酔いも相まって覚えるどころでは無かった。
「フッ、いいよ。名前くらい、何度だって教えるよ」
再び、私の横に腰掛けた彼は、少し日に焼けた小麦色の手を伸ばして来た。
すると、私の前髪が乱れていたらしく、そっと前髪を横に流しながら、
「俺の名前は本間一颯。24歳、大学院生」
「本間……さん」
「ん」
24歳って事は、私より3つ年下。
若いのに落ち着いていて、しっかりしている。
物腰が柔らかな彼は小首を傾げて、
「他には?何か聞きたい事はある?」
他に?……何かあるかしら?
二日酔いのせいなのか、頭が上手く回らない。
ふと、部屋を見回すと部屋のあちこちに植物が置かれている。
男性の部屋にしてはかなり珍しいんじゃないかしら?