心さん、そろそろ俺にしませんか?




「さっきの、ストレートに言い過ぎたかな……」


仕方なく家路へと向かう俺。でも、伝えなきゃ鈍い心さんには伝わらないし。


それに、俺の言葉の後に夕飯のお礼を言うなんて、上手くはぐらかされたんだろうな。


それでも、笑みがこぼれるのは相手が心さんだからなんだ。


曖昧な言葉でいい。


曖昧な態度でもいい。


曖昧な関係でいい。


俺の遠回しな告白に返事をしてくれなくていい。


それでも心さんの笑顔が見られるなら、幸せなんだ。


夕飯の時の美味しそうに食べる心さんの笑顔。家族が美味そうに食う姿とは違う。やっぱり、心さんに食べてもらえると……素直に嬉しかった。


「……あー、振り向いてくんねーかなぁ」


心さんはもう家に帰りついたかな?


俺の手料理の話を家族にしてくれてんのかな?


やべ、心さんの口から俺の話題が出るとか、考えただけでニヤける。俺は右手で口を覆う。


心さん、今何を思ってますか?


西川先輩のこと?


それとも、少しでも俺のことを……?


そんな淡い期待さえ抱いてしまうのは、また明日から、学校で心さんと会える楽しみがあるから。



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