なんで俺じゃあかんねん

「せやな!

あたしも、そっちのがいいと思うで。」

背後から聞こえてきた声に俺と母さんは振り返る。


「葵!おはよう。」

「おはよう、ママ。」


今日は入学式のため、一般生徒は休みだ。

だから、葵は家にいて、こんな時間に起きてきた。


「今の髪型、ハルに似合ってるで?

高校でもモテモテやな。よかったな~。」

ひやかすように笑って冷蔵庫へ向かう。

でも、冷やかしとは言え褒められた。

入学日から。

なんかいいことありそうやな、とか馬鹿な俺。


「あ、でも。

あたし巻き込むのはもうやめてな。

はぁ。だから、ハルと一緒は嫌やったのに。」

冷蔵庫から牛乳をとりだして飲みながら言う。
葵は牛乳が好きだ。

顔をしかめて俺を見てくる。


「しょうがないやろ。

モテんのは、俺のせいちゃう。」

別に好きでこの顔に生まれたわけじゃないし。

でも、
葵が『似合ってる』って言ったよな?


「まあ、そこまで言うんやったら

もうちょっと切らずにこのままでおろうかな。」

外見だけでも、好みのままで・・・。

「ホンマに!」


母さんは目を輝かせて喜ぶ。

葵は、興味なさそうに牛乳を飲んでいる。


・・・・おい。なんか言えよ。
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