なんで俺じゃあかんねん
俺は、音に引き寄せられるように最上階まで来ていた。
そのピアノの音は、この階の一番南の部屋から聞こえる。
俺は、また無意識のうちにその部屋の扉の前に立っていた。
そっと、そっと、扉を少しだけ開けてみる。
「・・・・・っ」
そこには、真っ黒なグランドピアノと
同じく真っ黒な長い髪をした少女がいた。
窓から入ってくる風が、髪をなびかせる。
夕焼けに、ピアノのが照りかえってキラキラ光っている。
ピアノだけじゃなくて、音も。
楽しそうやな・・・・
ピアノが好きなのが伝わってきて
俺の心にすっとしみわたる音色。
すごく、上手い。
やっぱり、すごい人なんやな・・・・。
教室では、全然そんな感じじゃないのに。
雅さん。
ホンマに天才少女やったんや・・・・。