なんで俺じゃあかんねん
「だれ!?」
ぴたっと演奏をやめて
俺の方を見る雅さん。
俺も、変に隠れようとはせずに扉を最後まであけた。
「・・・・!!」
思いも寄らない人物に、驚きを隠せないといったような感じだ。
俺は、気にもせずに拍手を送った。
「すごいな!!さすがやな。」
「坂井くん・・・・」
雅さんは、俺を見つめたままつぶやく。
「雅さん、ホンマにすごい。
なんか、ただうまいだけじゃなくて、音がキラキラしてた。」
「キラキラ?」
「うん。俺、ちょっと憂鬱な気分になっててんけど、それが晴れたっていうか。
なんか、ホンマにピアノがすきなんやな?雅さん。」
ピアノがすき
その言葉を聞いた途端、雅さんの表情が一変した。
「うん。好き。ピアノ、すっごい好き。」
雅さんは、鍵盤を慈しむようにそっとなぞる。