なんで俺じゃあかんねん
彼女の肩はふるえていた。
小さく見えた。
すごく弱く見えた。
全然関係ないのに、支えられたらいいのに、と思った。
「わたし、怖いねん。
このままやったら、こんなに大好きなピアノを、嫌いになりそうで。」
自分で自分の手を包み込んで
またうつむく。
「雅、さん・・・・」
俺はなにもできなかった。
近寄ることもできない。
なにか気の遣った言葉をかけることもできない。
ただ、その場に立ち竦んで
小刻みに震えている彼女を見ていることしかできなかった。