なんで俺じゃあかんねん


しばらくして、はっとしたように顔をあげる雅さん。


「ご、ごめんなさい!!

ただのクラスメイトの、坂井くんにこんな重い話。

されても困っちゃうやんね!?うざいやんね。

ごめんなさい・・・・。」

慌ててこちらに向かってぺこぺこ頭を下げる。


「いや、全然そんなことない。」

俺もそれを見て掌を向ける。

彼女より、俺のふがいなさの方が気になっていた。


「俺こそ、ごめん。なんも言えんくて。」

悔しくて唇をかむと、

雅さんは、優しく笑って首をふった。


「ありがとう。坂井くん、優しいんやね。」


"優しい"

清水さんに言われたときとは、ちがう。


聞き流せない言葉だ。



「優しくなんか、ないで。」

俺はちっとも優しくない。




「でも、わたしにはそう見えるから。」

俺には、そう言ってくれる雅さんの方が優しく見える。



「俺・・・・」

雅さんが許してくれるなら、
俺、


「また雅さんの演奏を聴きたい。」

< 137 / 485 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop