なんで俺じゃあかんねん
しばらくして、はっとしたように顔をあげる雅さん。
「ご、ごめんなさい!!
ただのクラスメイトの、坂井くんにこんな重い話。
されても困っちゃうやんね!?うざいやんね。
ごめんなさい・・・・。」
慌ててこちらに向かってぺこぺこ頭を下げる。
「いや、全然そんなことない。」
俺もそれを見て掌を向ける。
彼女より、俺のふがいなさの方が気になっていた。
「俺こそ、ごめん。なんも言えんくて。」
悔しくて唇をかむと、
雅さんは、優しく笑って首をふった。
「ありがとう。坂井くん、優しいんやね。」
"優しい"
清水さんに言われたときとは、ちがう。
聞き流せない言葉だ。
「優しくなんか、ないで。」
俺はちっとも優しくない。
「でも、わたしにはそう見えるから。」
俺には、そう言ってくれる雅さんの方が優しく見える。
「俺・・・・」
雅さんが許してくれるなら、
俺、
「また雅さんの演奏を聴きたい。」