なんで俺じゃあかんねん

「あんた、何しとん?」

通路をはさんで

とうとう葵が聞いてきた。

「今から飯食うとこ。」

「へえ。試験終わって早々かよ。」

「そっちもな。」

お互い無表情に嫌味を繰り返す。

いつもの俺たちの会話。


「てか!葵!!弟、おるなんて知らんかったで!?」

葵の向かいの女が興奮したように言う。

そこで、やっとにらみ合いは一時休戦。


「だって言ってへんもん。」

嫌そうにその友達に告げると、

「言ってや~!」

とその友達は大げさにわめいている。

そして、俺の方を見て手を振ってきた。


・・・誰やねん、あいつ。

って思ったけど、一応会釈。


「名前なんて言うん?」

俺の会釈に満足したのか、質問してきた。

「坂井 春也、ですけど。」

「春也くんか~よろしくね!」

「はあ。」

名前で呼ぶんや・・・。

まあ葵も"坂井"やからかな?

「もう、いいから。

みんなここ出よ。」

葵が苛ついたように友達を促して4人は席を立った。

一人の友達は、名残惜しそうに最後まで手を振っていたけれど。



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