なんで俺じゃあかんねん
その夜。

別に図ったわけじゃないけど、親も寝静まった12時前に、たまたまリビングで葵と鉢合わせることになった。

「あ・・・。」

葵が牛乳をちょうどコップに注いでる時に、俺が入ってきた。

寝る前に水飲もうと思っただけ。

こっちを一瞬見たあと、また目をそらす。


だからなんなん?

なんでそっちが傷ついたような、ショック受けてるような顔してるわけ?

意味がわからん。

傷ついてるのも、ショック受けてるのも俺やねんけど。

あんな、いかにも少女漫画のクライマックスかよ、みたいな会話きかされて。

よかったよな、ほんまに。

おまえだって一応女子高生やん。

王子様に言い寄られて、うれしくないわけないやろ?

俺は、心底気分悪いけど。

って、なんでこんな八つ当たりみたいなこと思ってるんやろ。

聖人君子な先輩と違って、俺ってほんま器ちっさいなー。

改めて、やっぱり負けててさらに苛つく。


俺は、内心ごちゃごちゃ考えてるくせに、
それを表には出さず、無言で冷蔵庫から水をとりだした。

葵は、そんな俺をさけるようにキッチンからでて、テーブルにつく。

牛乳をちびちび飲みながら、こっちを伺ってるのが背中越しにも伝わってくる。
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