なんで俺じゃあかんねん
気づかないふりもできた。

いや、そうしたかったし、

もう葵のことで、今日は振り回されすぎやし、

そろそろ落ち着いてそのまま寝てしまいたかった。

でも・・・

突然振り返って、葵と目を合わせる。

向こうは、びっくりしたように目を見開いて、でもそらさなかった。

いや、俺が『そらすな』と目で訴えていたかもしれない。

「・・・っ。」

なぜか泣きそうな顔をしている。

いや、だから泣きそうなのは俺。

「先輩と付き合うの?」

それでも表情には出さずに、静かに問いかける。

びくっとこの距離からでも、肩を震わせたのがわかった。

おまえはほんまに・・・いつもわかりやすすぎるねん。

こんな状況でも葵は葵で・・・

そういうところが、葵らしくて、好きで・・・

笑えてくるのに・・・あかん、やっぱ、俺が泣きそう。

「まだ・・・わからへん。」

必死に平然を装いながら牛乳を飲んでなんとか落ち着こうとしている。

わからへん、か。

即答で肯定されるという最悪な事態は免れた。

まだ、悩んでるんか・・・そっか。うん。

ほら、葵のたった一言で、こうやって浮かれる。単純。


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