なんで俺じゃあかんねん
「・・・ごめん。」
小さく言う。
この部屋がシンとしてなかったら、絶対聞こえんかったくらいの小さい声。
「昼間はちょっと言い過ぎたわ。
ごめんなさい。」
律儀に腰から頭をさげる。
その姿は小学校のときから変わってない。
小学生の時も、俺が大事にしてたおもちゃを葵が落として壊して
泣きながら頭をさげて『ごめんなさい』って言ってた。
つまり、この行動は葵が心から謝りたいときに行うもの。
それがわかってるから、なんか許さなあかん気になってしまう。
「だから、別に怒ってないって言ってるやんけ。」
起き上がってベットの上であぐらをかく。
「うん・・・。」
葵はベットの前に体操座りした。
こいつ、反省してる。
葵がこのポーズするときは、たいてい落ち込んでるときや。
「でも、ハル怒ってたやん!
無視してきたし。」
「確かに、無視はしたけど。」
「やっぱりー!」
体操座りのまま顔を上げて、俺をまっすぐに見る。
「でも、別に怒ってない。」
「じゃあ、ハルは怒ってもない相手を無視するわけ?」
「そうじゃなくて。
俺はただ、他人のつもりで接してみただけ。」
葵はうつむく。
ちょっとだけ葵専用のシャンプーの香りが漂ってきた。
こいつ、風呂あがりか?
まあ、パジャマやし、そうか・・・・