なんで俺じゃあかんねん

そのひと言を聞いて、俺は複雑な気分になった。

うれしいより、泣きそうになった。




・・・・葵にとって、やっぱり俺は弟。




「ハルとは血つながってないけど、ハルは私の弟や。」


葵が俺を気遣って言ってるってことはわかってる。

でも、その言葉は、俺にはなにより辛いで。




「これから先も・・・きっと、ずっと。」

「・・・ずっと?」

「うん。
・・・ずっと。」

小さく言って、少しうつむく。

でもまたすぐに顔をあげて葵は優しく笑う。


久しぶりに見た、俺に向けられた葵の笑顔。

でも、その顔は"姉の顔"。

葵の笑顔は好きやけど、こんな笑顔がほしいんじゃない。

こんな笑顔なんやったら、いつもの仏頂面の方が数千倍マシやわ。



「だから、昼間言ったことは勢いやから。
あんなこと思ってないから。

それと、これからも弾みでああいうこと言ってまうかもしれんけど覚えてて。

私はハルのことちゃんと弟って思ってる。

弟として大事にしてるつもり。」


弟として、大事・・・か。



「なんか、恥ずかしいから、もう出て行くわ。」

最後にちょっとだけはにかんで部屋を出て行った。


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