桜縁
つい見惚れてしまいそうになる。
月は赤くなった顔を隠すように、しゃがみ込をで洗濯の続きをする。
ーーバシャッ!
ーーーバシャッ!
と、何度も水を浴びる沖田。
それをいつの間にか月の目がとらえていた。
「ん…?どうしたの?」
その視線に気づいた沖田が尋ねてくる。慌てて視線を外す月。
「い、いえ!なにも…!」
「月ちゃん。」
沖田が音もなしにしゃがみ込んだかと思うと、視線があった月の唇に自分の唇を重ねていた。
「ん……。」
短い口づけですぐに沖田の唇が離れた。
「沖田さん……。」
「そんな顔をするからだよ。そんな顔されたらたまらなくなる。」
くすりと微笑む沖田。その眼差しは優しく月を見ていた。
沖田の身体に伝う雫が、月の鼓動を余計に上げてしまう。
そんなに男らしくされてしまうと困る。
「で、でも…ここは。誰かに見られたりしたら…。」
「大丈夫だよ。誰も見ていないから。じゃあ、僕は行くね。」
沖田はさっさと行ってしまう。
月はその背が見えなくなるまで、その背を見送っていた。
前のようなギクシャクとした関係ではなくなったとはいえ、こうも開き直られると逆に困ったりもするものだ。
沖田の悪戯も大人びたからかい方をするものだから、余計に意識してしまうというか、無駄にかみ付いているだけのような気がする。
それを当の沖田は楽しんでいるようだが、また、これも一歩前進したということにしておけばいい。
月は大量の洗濯物を干し終わると、食事の準備をするために、勝手場へと向かった。
今日の炊事当番は斎藤と一緒であった。基本、月が幹部全員分作るのだが、量が多くて大変とのことで、代わりばんこで幹部達が仕事の合間に手伝ってくれていたのだ。
前に斎藤と口づけだのなんだの…と、なんやかんやとあって沖田との関係もギクシャクとしていた時もあったが、今ではそんな事も忘れるぐらい自然な関係であった。
「あ、お醤油切らしてた…!」
お浸しを作ろうとしていた月が、調味料を切らしていたのに気づく。
すでにお浸しは出来上がっている。お醤油がなくては、味付けが出来ない。
「私、お醤油買って来ますので、斎藤さん後をお願いできますか?」
「買い物なら俺も行ってやろう。」
「え…?」