桜縁




「もう夕暮れだ。このような時には何が起こるか分からんからな。」


京の治安はあまり良くない。夕方辺りは人通りは多いが、不定浪士に絡まれる可能性がある。


斎藤はそれを心配しているのだろう。


「大丈夫ですよ。私はそんなにか弱くないですから。それに経験だってちゃんとつけてますから。」


大丈夫だと言わんばかりに笑う月。


だが、斎藤は納得できないようだ。


「何を言っている、前に浪士に絡まれて怪我をした事をもう忘れたのか?片手が塞がっていては、刀はまんろくに力を発揮出来ん。それぐらいは知っているだろ!」


やや声を上げて月を怒る斎藤。


確か、刀は片手で扱えるような物ではない。それに両手ならまだしも、片手だけでは浪士に絡まれても、月が勝てる可能性は低い。


ましてや以前のような事があれば…。


そう考えると斎藤が心配するのも最もなことだ。


「す、すみません……。」


自分のしようとした行いに、申し訳なさそうに斎藤に謝る月。


「分かればいい、行くぞ。」


「はい。」


月は斎藤と共に夕方の町へと出て行った。






町は予想通り人で溢れていた。


月と斎藤は人込みの間を通りながら、行き着けの店でいつも使用している醤油を買う。


買い物も済ませ屯所へ帰る途中、驚きの貢献か目に入る。


なんと会津兵が長州の民を奴隷として、引いて来たのである。


奴隷達はボロを纏いながら、手足は痣や傷だらけで、足元がフラフラとして今にも倒れそうに歩いていた。


街の人々はコソコソと話たり、偏見の目でその貢献を見ていた。


「酷い……!」


思わず口に手をあてる月。


いくらなんでも酷すぎる。


「敵の扱いなどそのようなものだ。我々には何も出来ん。」


そう言っている間に、目の前で引いて行かれる奴隷達。悲痛の顔で表情が歪んでいた。


と、月の目の前で奴隷の一人が倒れ込む。


よく見ると、弱った老人であった。身体中傷だらけにされ、今にも力尽きそうな、そんな目をしていた。こんな老人が何の罪で奴隷にされたというのだろう。


老人は仕切りに助けを求めるように手を伸ばすが、後ろから来ていた会津兵に羽交い締めにされる。


「立て!!」


「ううっ……!」


苦痛を伴う悲鳴を上げる老人。


会津兵は容赦なく老人を虐める。


「………!」


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