桜縁



そして、布に水を染み込ませ沖田の口元に持って行き、飲ませようとする。


しかし、口にわずかに入るだけで、飲み込もうとしない。


「……沖田さん!沖田さん!!起きて下さい!沖田さん……!!起きないと、このままだと死んじゃうよ!?お願いだから、起きてよ!!沖田さん……!!」


必死に呼びかける月。


このままでは本当に死んでしまいそうだ。


「仲間を捜してるんでしょう!?捜さないとダメだよ……!私のことも助けてくれるんでしょう?……兄さんを一緒に捜してくれるって、約束したじゃない………!死んじゃやだよ……っっ!ねぇ、起きてよ……っ!」


いつの間にか、月の目から涙がこぼれ落ちていた。


その願いが通じたのか……、沖田の手がゆっくりと動き、月を抱きしめていた……。

「沖田さん……?」


「月……。」


閉じていた目が開かれ、月を顔を見ていた。


そして、指先で涙を拭う。


「沖田さん……!良かった……!」


月も沖田を優しく抱きしめた。


なんとか無事に、沖田は目を覚ました。それだけでも、せめてもの救いだ。


しかし……、


「ゴホッ!ゴホッ!……ゴホッ!ゴホッ!!……ゲホッ!!」


「!!」


安心したのもつかぬ間、沖田が激しく咳込み、大量の血を吐いたのである。


背中にまな温かいものを感じる。


「沖田さん!」


「ゲホッ!ゲホッ!!………はぁはぁ……、大丈夫……大丈夫だから……。」


月は急いで黄土水を手で掬い上げ、沖田の口元に持っていく。


「飲んで下さい……!なんの毒か分かりませんが、解毒剤になります!!」


「………ありがとう……。」


沖田は月の手を包み込むようにして、自分の口をつけ水を啜る。


荒くなっていた息が、落ち着いていくのを感じる。


「はぁ……はぁ………。」


「ここなら、まだ敵はいません。私は少し、様子を見てきますから、沖田さんは休んでて下さい。」


月は自分の小刀を持ち、立ち上がろうとする、しかし逆に腕を引かれ、その場に座らせられる。


「……沖田さん?」


沖田は自分の脇差しを取り、月の腰にさした。ちょうど小太刀くらいの大きさになる。


「……君はそれを持って、すぐに都へ向かうんだ。」


「え!都へ……?」


「うん、この森を抜けると都に行ける。それを持って、【浪士組の屯所】へ行くんだ。」


「浪士組の屯所…?」
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